天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 私の結婚を望んだのも、今ならわかる。病院のためというよりも私の幸せを自分の目で確かめたかったに違いない。

「莉子」

 振り向くと、啓介さんが少し屈んで心配そうに私を見つめていた。

「そろそろ俺は病院に戻らなきゃいけないが、大丈夫か?」

「うん。気にしないで行って。こっちは平気だから」

 啓介さんは母に挨拶をして式場を後にする。

 彼が乗った車が見えなくなると、もやもやとしたものが込み上げてくる。それがなにか考えたら最後のような気がして、意識的に振り切る。

 父が病にに倒れたあの日から、啓介さんはますます忙しくなった。

 最近は寝室も別で、彼がいつ帰ったのかもよくわからない。いつの間にかいなくて、気づいた時には『いってらっしゃい』と声をかけるだけ。

 いつの間に、こんなに遠い存在になってしまったのか。

 父が倒れるまでのひと月は恐いほど幸せだったのに、今となっては夢でも見ていたような気さえする。

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