天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
「仕方ないわよお母さん。患者さんがいるんだもの」

「だけど、医者は啓介さんだけじゃないのよ? 脳外の先生も新たに何人も迎えたんでしょ」

 反論せず、私は母の肩を抱いた。

 そうだよね、お母さん。私もそう思う。

 口にしたらお終いだから、言わないだけよ。



 父が入院中、母も私も多くの時間を山上総合病院で過ごした。

 ずっと個室にいるわけじゃない。併設されたコンビニに行ったり、父に変わって事務室に行ったり、病院にいるといろんな話が耳に入った。

 皆揃って心配してくれたけれど、ときには聞きたくない父の評判まで聞こえた。

『島津先生ってほんと、すごいわよね。医者としてもだけど、経営者としても優秀。ようやくこの病院も未来が見えてきたって感じ』

『そうそう。正直言って山上副理事長長は人柄がよくても、医者としてはヤブだからね。先生たちになめられてて、ちょっとね。あれじゃ心配だったから』

 私も薄々は気づいていた。父は経営者としての才能はあまりなかったかもしれないと。

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