天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 啓介さんがほんの数カ月で立て直したのが、その証拠だろう。

 看護師やスタッフの噂話は多分間違ってはいない。

 でも、耳にするのはつらかった。

 父には父のよさがあったはず。啓介さんとは違った長所があった。ちょっとおっちょこちょいだけれど明るくて。父はいつだって患者さんに寄り添って、本当に優しい人だった。

 今日のお通夜も、父の患者さんはたくさん駆けつけて、父のために涙を流してくれた。

『山上先生はとっても優しかったんです。本当に親身になってくれて』

 患者さんたちは口々に言ってくれたのである。

『いい先生だった』と。

 親としても最高の父だった。

 忙しくても私たち家族をないがしろにはしなかった。

 泊まり込みになるときは、みんなで作った料理を重箱に詰めて、家族で理事長室に押しかけワイワイしながら食べた。

 なのに、啓介さんは違う。

 家では優しい夫だけれど、病院では近寄りがたい雰囲気をまとっている。

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