天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 父が理事長室にいない病院には、私の居場所なんてない。

 山上総合病院にとって私たち山上の人間はもう、邪魔なだけの存在になってしまったのだ。



 ふいに母が大きな溜め息をついた。

「なんとなく嫌だわ」

「お母さん?」

「ご覧なさいよ、このがらんとした会場。病院関係者は誰もいないのよ。お父さんが命を削って守ってきた病院なのに」

「でも通夜の式には大勢の人が参列してくれたじゃないか」

 健がそう言って母を慰めたが、私は母の気持ちがわかる。多分健だってわかっている。口にしないだけだ。

 最後まで残ってくれたのは、すでに病院を退職している父の側近だった人だけで、現役の関係者はいない。もちろん病院に休みはないようなものだから彼等を責めはしないが。

 それでも事務方くらいは、と母は思うのだろう。今の私のように。



「お母さん、明日の告別式はもっと大変だろうから、休んで。あとは私が引き受けるから」

「そうね。じゃあ休ませてもらうわ」

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