天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 健に母の付き添いを頼み、私は会場入り口脇の休憩コーナーに腰を下ろす。

 今夜は母と弟と三人で式場に泊まり、父に付き添うつもりだ。

 お通夜の夜は長い。遅くなっても駆けつけてくれる人がちらほらといる。ひとりずつ挨拶をしてお礼を述べていると、若い女性が現れた。

 喪服がやけに似合う、一度見かけたら忘れられないような美しい人だ。

 でも、見覚えがない。父の患者さんか、ご家族の方だろうか。

 お焼香を済ませた女性にお礼を告げた。

「本日はありがとうございます」

 ご愁傷様ですと型通りの挨拶を済ませた女性は、薄く微笑んだ。

「啓介さんはやはりいらっしゃらないのね」

 ――啓介さん?

 ざわざわと胸騒ぎがする。

「病院が忙しいので」

 フッと、私の言葉を弾くように、彼女は鼻で笑った。

「病院ねぇ。こんなときになんですけれど。妊婦の私を捨てた理由がよくわかったわ」

 よく見れば喪服のワンピースのおなかあたりが少し膨らんでいた。

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