天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 挑むような強い目の力に気圧されて、言い返したいのになにも言葉が出てこない。

「なにも知らなそうだし、かわいそうだから、こっそり教えてあげる」

 そう言って彼女は私の耳に顔を近づけてささやいた。

「彼はね、彼のお父様が代表を務めるゼネコンSIMAの再開発事業のために、あなたと結婚するように命令されたのよ」

「再開発?」

「そうよ。あなたのお父様、反対だったそうね」

 冷たいものが心にヒタヒタと落ちてくる。

 病院の周辺で再開発の事業。父は反対だったと聞いている。結局、事業区域内に病院は含まれていないはず。その後、病院を地区外にして事業は進んでいると聞いた記憶がある。

 でも、あの事業が啓介さんのお父様の会社が進めているとは知らなかった。

「お嬢さん、あなた本当になにも知らない箱入り娘なのね。彼が病院を手に入れれば、また計画には病院が含まれる予定なのよ?」

 ニヤリと口角を歪めた彼女は、スマートフォンを手に取る。

「まあいいわ。とりあえず私と彼が〝特別〟に親しいという証拠を見せてあげる」

 私に差し向けられた画面には、彼女と啓介さんが笑っている写真が表示されていた。



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