天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 この一週間で一気に老婆にでもなったような気分だ。

 いっそこのまま年老いてしまってもいいと、ふと思う。閉じた瞼を開けたとき、十年二十年が過ぎていれば、この悲しみや煩わしさもなにもかも乗り越えているはず。

 啓介さんとの関係も。

「――莉子?」

 振り返ると、啓介さんが気遣わしげに私を見つめていた。

 もしかすると何度か呼ばれたのかもしれない。

「大丈夫か?」

「あ、ごめんなさい。ホッとしたら力が抜けちゃって」

「とにかくゆっくり休んだほうがいい」

「うん。今日は早く休む」

 啓介さんは私の額に手をあてる。熱をみているんだろう。

「疲れがとれないようなら病院においで。疲労回復の点滴をしよう」

 できるだけ明るくにっこりとうなずいた。どんなに辛くても、行くつもりはないから。

 啓介さんは腕時計を見る。

「俺は一旦病院に帰らなきゃいけないが……」

「わかった。私はお母さんと一緒に実家に行くね」

「すまない。一緒にいてあげたいが手続きとか色々あってな」

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