天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
私は安心して母と一緒に長野に行った。
「軽井沢はいいわねー、やっぱり落ち着くわ」
「うん」
父の葬儀が終わりひと通りの手続きが済んだ頃、私は母に妊娠の報告と同時に離婚を考えている旨を伝えた。
その原因になった鈴本小鶴が妊娠している話はしなかったが、浮気の証拠もあると伝えた。やられっぱなしは悔しいから、流樹を浮気相手に仕立てる計画も。
啓介さんが病院狙いで結婚したとは言わなかったが、その代わりに、私は啓介さんと一緒にいると父を否定されているようでつらいのだと言った。それも嘘じゃないから。
『啓介さんはお父さんを馬鹿にしたりはしないけど、でもこの先負い目を感じながら一緒に暮らしていくのは嫌なの。啓介さんは、子どもはいらないって言ったの。父親に愛されない子どもなんてかわいそうだし』
母は溜め息をついただけで反対はしなかった。
『好きにしなさい。病院は啓介さんにあげたらいいわ。慰謝料にはなるでしょ』