天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 全国へ配送したり、直営のカフェやリンゴのジャムなど商品開発など手広く事業を展開しているので、人手はいくらあっても足りないという。

 私が正直に事情を話すと、彼女は快く迎えてくれた。

『事務の仕事でもなんでもあるから、体調に合わせて手伝ってくたらいいよ。子どもを背負って働いている人もいるんだ。安心して働いて』

 幸い悪阻もほとんどなくて体調もいい。忙しく働きながら、ひとまず啓介さんの存在を忘れようと思う。

 母を見送り、私も早速出かける。

 ペーパードライバーを卒業し、車の運転もできるようになったのだ。おかけで行動範囲も広がり、あちこち気晴らしにドライブもする。

 田舎道を進み信号を待ちでスマホを見ると、瑠々からメッセージが来ていた。

【軽井沢はどう?】

【いつでも遊びに来て! 蜜たっぷりのリンゴおいしいよ】

 信号が変わり間もなく、今度は電話の着信があった。

 信号の先の路肩に止まり、画面を見るとサトさんからの電話である。

「もしもしサトさん?」

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