天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
「だって、あなた――」

 そうだ。忘れちゃいけない。

 原因は啓介さんにある。私じゃない。

「どうして私ばかり責めるの?」

「責めたか?」

 この減らず口め。わかったわ、そっちがその気なら見せてやろうじゃないの。

 私には奥の手がある。こうなった場合に備えて準備はしてある。

 ソファーに戻りバッグに手を伸ばす。

「こうなるに至った原因はこれです」

 封筒から出した写真やファックス用紙を、テーブルの上に一枚ずつ並べた。

 啓介さんが女性とホテルに入っていく写真と、さらに部屋に入る写真。相手の女性は三人だ。どこの誰かまでは調べていない。この写真だけで十分だし。

 それでもだめなら、鈴本小鶴の写真を最後に出せばいい。

 ゆっくり近づいてきた啓介さんはソファーに腰を下ろし、ファックス用紙を最初に手に取った。

【啓介さんの子どもができました。早く別れろ能無し妻】

【離婚はまだですかー。婚外子になっちゃうよ】

 彼は怪訝そうにファックス用紙を見つめる。

< 70 / 286 >

この作品をシェア

pagetop