天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 啓介さんはコーヒーメーカーの前に行き、慣れた様子でセットする。
 彼に用意してもらうのは少し抵抗はあるが、どうせ離婚するのだと開き直った。

「いつも、自分でコーヒーをいれるんですか?」

「ああ。なにか変か?」

「いえ」

 美人秘書にやってもらうんだと思っていたから、ちょっと意外だった。
 浮気相手の写真の中に、彼女の写真はなかったが、この部屋で恋人同士のように過ごしているんだろうに。

 それとも部下とは付き合わないマイルールでもあるのかしら、と考えて、どうでもいいわと息を吐く。

 気持ちを落ち着けるように、コポコポとコーヒーメーカーが立てる音に耳を澄ます。

 それにしても、どうしたらいいんだろう。啓介さんの話が本当なら、病院をどうしたらいいかわからない。私には到底無理だし、弟の健もまだ高校生だ。院長に押し付けるわけにもいかないし。

 本当に啓介さん、辞めちゃうのかな。

 それは困る……。

 悶々と考え込むうち、コーヒーができあがったようだ。

 啓介さんはコーヒーが入った使い捨てのカップを、私の前に置き、向い側の席に座る。

「子どもの性別は?」

「女の子です」

「写真は? 見せてほしい」

 本当は見せたくないけれど、スマートフォンを取り出して表示した。

 産んですぐ、私が抱いている写真だ。

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