天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 でもあなたには傷つく権利なんてない。病院のっとりだって、さっきの話が本当かどうかはまだわからないし、数々の女性と浮気をして、そのうちのひとりとは長くつき合っている上に子どもまでいる。

 鈴本小鶴さんは私より先に出産したはずだ。

 男の子?それとも女の子? その子のことは抱いたの?

 彼女の不敵な笑みを思い出し、密かに拳を握った。

「誤解だけは解くか」とつぶやきながら溜め息をつき、ゆっくりと顔を上げた彼は、私にスマートフォンを返してきた。

 画面は既に暗く、なにも表情されていない。

「電話とファックスについては俺も調べよう。院内の誰かなのは間違いないだろうし」

 心当たりがないのかな。

「写真の女性は、ひとりずつ説明しよう」

 啓介さんは、一度は封筒にしまった写真を取り出して並べた。

「この女性は製薬会社の女性だ。一緒にホテルに入ったのはここで講演会があったから。この前後に院長やほかの医師がいたはずだから、聞いてみるといい」

 えっ、そうなの。

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