天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 院長は片脚が少し不自由なため、杖を持ち歩く。ガラスにそれらしき影があり、言われればそうかもしれない。写真では啓介さんと女性が話をしているためか、絶妙にふたりきりに見えるが、少し離れている位置に連れがいても不思議はないのだ。

 でも私は先入観からか、信じ込んでいた。

 いったいなにが本当で嘘なのか頭がおかしくなりそうだ。

「信じる気持ちがなければ、どう言おうと無駄だろうがな」

 初めて耳にする冷ややかな声に顔を上げると、啓介さんは軽蔑するような目で私を見る。

 突き放すような、不愉快さを通り越して呆れているような声と目に晒されて息を呑んだ。

 苦しげに喉がごくりを音を立てた。

「ただ、この調査会社は許せない。この写真三枚とも、俺の浮気を捏造する意図が丸見えだ。弁護士に頼んで法的措置を取らせてもらう。イタズラ電話についても調査する。結果浮気までされて子どもまで。こんな結果を招いた責任は取らせないとな」

 私が怒鳴られたわけじゃないのに、背筋がゾッとした。

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