天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 怖い。啓介さんは本気で怒ってる。彼の話が本当なら怒るのも無理はないが……。

「どこだ? 調査会社。この封筒には書いてないが」

「あ、そ。それは、友人が頼んでくれたから。聞いてみないと」

「その友人が浮気相手か」

「ち、違うわ」

 兄妹だけど、調べてくれたのは瑠々だもの。

「じゃあ、あとで教えてくれ」

「はい……」

 彼はまた大きく溜め息をつき、コーヒーを手に取った。

 私もカップに手を伸ばす。

 落ち着かないといけない。彼の勢いに圧倒されず、自分の信念を貫かないと。

 この写真がすべてじゃない。少なくとも鈴本小鶴という女性は本人が証言しているし、啓介さんが実際に彼女と会っているのは間違いないのだから。

 少し冷めたコーヒーが喉を通り過ぎると、気持ちが少し和らいだ。

 ふぅっと息を吐く。

「この病院の件だが」

 啓介さんもコーヒーを飲んで少し落ち着いたようだ。声の様子がもとに戻った。

 穏やかな響きだ。

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