天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
「俺はここを立て直すために、やむなく〝君たち〟の代わりに理事長席にいるが、登記上も含めてあくまで〝君の母〟の病院だって知っているよな?」

「――はい」

 そんなに〝君〟を強調しなくてもいいのに。

「俺がここを欲しければ、とっくに俺の名義に変えただろう。そうすれば口座もなにもかも俺は自由にできる。なのにそれをせず、借金だけは全て俺が保証人になった。そうする理由を考えみろ。喜んでこの席にいると思っていたのか?」

 だって……。

 彼の理路整然とした説明に言葉を失って、反論がなできない。

 落ち着いて考えれば、確かにそうかもしれないと思う。

 彼は保証人になってくれた。すべてを背負って。名義も確かに替えたとは聞いていない。

「どうしてそう思ったんだ?」

「え? なにをですか?」

「俺がこの病院を欲しがっていると思ったんだろう?」

「それは……」

< 80 / 286 >

この作品をシェア

pagetop