天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 途轍もない罪悪感に襲われた気分のまま席を立つ。



 でも、これでいいのだ。

 なにはともあれ、目的は達成できたと思うしか……。

「失礼します」

 頭を下げて理事長室を出た。

 後ろ手に扉が閉まると、涙が溢れてきそうになり、上を向く。

 本当に終わりなんだと思った。

 復讐に来たはずが、なぜか自分が最低の人間のように思えてしまうのは、いくつかの誤解があるとわかったからだ。

 啓介さんは私を情けないと思っているだろう。

 相談もせず勝手に誤解をして、あんな写真で簡単に騙されるバカな女だったのかと嘆いているかもしれない。

 でも、後で弁護士から鈴本小鶴の話をしてもらえば、少しはわかってくれるはず。

 わかってもらえなくてもいい。

 どうせ他人になるんだから……。



 白い廊下を進みそのまま院長に会いに行った。

 帰る前に確認しなきゃいけない。

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