妖の街で出会ったのは狐の少年でした

39話 姉弟

温泉に浸かっても、心からゆったりできることはなかった。オレはどうすれば
よかったんだろう。
部屋に戻ると布団が敷かれていて
浴衣が用意されていたので
ありがたく着ることにした。
「失礼します。」
カズハが夕食を持ってきた。
「ありがとうな」
「これも、仕事ですから」
カズハはすました顔で言った。
「なぁ、この後ちょっといいか?」
「この後は練れ者の方と交代で、時間は空いてるけど、どうして?」
「交代したらさ、玄関に来てくれねえか?」
「・・・わかった」
「では私は失礼します。」
オレは夕食を食べ始めるが、
心のわだかまりが解けてないせいか
美味しいとは感じられなかった。

私は部屋に戻り、制服に着替える。
「どこか行かれるのですか?」
「ジュンが泊まっているの知ってる?」
「はい、さっき会いました」
「仕事終わったら玄関に来てって言うから行ってくるよ。夕食は戻ってきてからお願いしていい?」
「承知しました、」
旅館内は暖かいのでブラウスとスカートで行くことにした。
「お待たせ、ジュン」

「ごめんな、仕事終わりに。」
「大丈夫、気にしないで。
どうしたの?」
オレは今までのことを話した。
昔から比べられている気がしたこと。
進路のことで一方的に捲し立てて、
飛び出してきたこと。
「だから不機嫌そ・・・ごめん」
「別にいいよ。機嫌が悪かったのは
事実だし。オレ、姉ちゃんが何を考えているのかわかんねぇんだ」
「私、一人っ子だからな、
よくわからないけど
憧れられる存在で
いたかったんじゃないのかな」
「憧れられる?」
「うん、私ね学校とかで下の子達に頼られると嬉しくて、空回りすること
たまにあるんだ。ジュンのお姉さん、
ジュンが憧れてるのがわかってたから
完璧でいようって思うんじゃないかな」
「・・最初は、憧れていたんだ。姉ちゃんみたいになりたくて。でもだんだん、差が開いてきて気づいたら憧れ
じゃなくて嫌悪感になっていた。」
「そっか。ねぇ、ジュン。私はジュンのお姉さんがどのくらい要領がいいのかは知らない。でもね、完璧じゃなくて
いいんだよ。ジュンはジュンにしか
できないやり方で誰かを元気づけることができるんだよ。・・・ナツキの背中を
押したように」
ーありがとうジュン、
私の親友になってくれてー
「ありがとうな、カズハ
話聞いてくれて。」
「話を聞くぐらいしかできないからね」
「そんなことねぇよ。心が軽くなった。」
「じゃあ私そろそろ戻るね」
そう言ってカズハは足早に去っていった。
オレにしかできないやり方・・・
「・・・なんでオレがナツキの背中
押したの知ってるんだ?」

「おかえりなさい。カズハ様」
「ただいま、ロク」
布団が敷かれていて、テーブルの上に
夕食が置かれていた。
それを食べている時、思い返す。
実は、あの日のナツキとジュンの
やりとりは廊下で偶然見ていた。
多分私だけだろう。
自然に口角が上がる
「どうかしましたか?」
「いや、なぁんにも」

次の日恐る恐る家に帰ると、
めちゃくちゃ怒られた。
主に姉ちゃんに。
父さんは姉ちゃんを宥めながらも
連絡もなしに外に泊まり朝帰りなのは
感心しないな、と低い声色で言われた
「ごめんなさい」
「私こそごめんなさい。お母さんが
死んじゃって、私がしっかり
しなきゃって思ってたけど、いけない
ところまで踏み込んで口出ししてキレられて当たり前だよね。ずっと我慢してたんだね。気づけなくて、ごめんね」
黙っていた父さんが口を開く。
「今日は久々に外泊するか。準備して今から出るか」
「また急ね。お父さん」
「どこにいくんだ?」 
「狐の宿屋」
「オレ、もう一泊してきたよ」
「まぁいいじゃないか。
お礼もしないとな」

「いらっしゃいませ、お客様って」
「さっきぶりだな、カズハ」
「今度はご家族で来ていただいて」
「昨日は息子が世話になりました。」
「いえ、そんな・・・」
「・・・ジュンの彼女?」
「ちげーよ!そんなんじゃねぇよ」
オレたちはカズハに案内された
部屋に入る。
温泉に浸かりのんびりしていると昼食が運ばれてきた。
運ばれてきた昼食は昨日の夕食より
美味しく感じた









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