妖の街で出会ったのは狐の少年でした

44話 狐の宿屋

ルイが嫁いで行ってから早1ヶ月。
私は近くのカフェで働きながらのんびり 
過ごしていた。
近況報告ができないのは寂しいが
幸せでいてくれたらいいなと思う。

ある日、家に帰ると小包があった。
手に取るととても軽い。
家には誰もいなかったが私宛だったので、
躊躇なく紐を解きテープを丁寧に剥がす。
開けるとツンとカビ臭いにおいが鼻についた
「・・・なにこれ」
中にあったのは綴じ本だった。かなり
古いのか表紙がところどころ破れていた。
パラパラめくっていると封筒が落ちてきた
開くと
「おじさんからだ」
拝啓ナグモ様
先日はご足労いただき誠にありがとうございました。あのあと娘が貴方がきてくれて
心強かったと嬉しそうに話していました。
それからわがままの事も。
もし貴方が躊躇い実行することをやめても
咎める気は一切ございません。
実行する場合この本が役に立つと思うので
お渡ししたいと思います。
お手数ですがこの書は使用を終えたら
ご返送をお願い申し上げます。
最後にあなたの末永いご健勝とご多幸を心からお祈り申し上げます。
「使用を終えたらって・・・」
これ、記載されてるの昔の字だから読めない
翻訳してほしかったというのはわがまま
すぎるか。
私は図書館に行き古代辞典を借りひとつずつ翻訳をしてやっと現代文字版で書き終える
ことができた。最後に全て書き記すことができたか確認して綴じ本は感謝の手紙をつけて返送した。
「私がやろうとしていることって
禁止された術なのか」

それから私は両親に見聞を広げるためと
嘘をつき、生まれ育った街を出た。
それからしばらく彷徨い
その日暮らしで生きていた。
そして比較的治安の良いこの街にたどり着いた。そして運良く宿屋の経営者に拾われた。
薄汚れていて毛並みも悪い見た目から、
身分を示す物もないだろうと判断して
好き勝手できると思ったのだろう。
「交換条件だ。」
その方は私にそう言って宿屋に連れて行き、
衣食住を約束するからここの経営者になって欲しいと。
「・・・はい?」
聞くとここの経営者セツナさんは最近
忙しくて宿屋の外に出ることすらままならないらしい。たまには羽を伸ばしに行きたいとのこと。短期間ならと思い引き受けた。が、
「帰ってこない!!」
あれから数ヶ月が経つが手紙の一つも届かない。今は板についてきた経営者としての仕事だが最初は周りに迷惑ばかりかけて逆に
従業員から手助けされてばかりだった。
それから数日してセツナさんから手紙が
届いた。
「はぁ!?」
手紙の殆どが旅行の話なので省略するが
あちこち見ているうちにもっと遠くまで行きたくなったからあなたに宿の経営を託そうと思います。たまに手紙やお土産も送るから
経営がんばってね
「託すってそんな簡単に!?というか戻ってこないの!?ん?」
追伸
それから看板も変えといたから
気に入ってくれるといいな♡
「ん?看板!?」
慌てて見に行くと、狐の宿屋に改名されていた。しかも狐の影絵までつけて。
もしかして最初からこうするために私を
拾った?悩んでも仕方がないのでセツナさん
から託された経営を勤しむこと早数年。
そして彼と出会う。
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