妖の街で出会ったのは狐の少年でした

45話 罪と罰

忙しい時期を乗り越え外に出ることにした。
少し遠くまで行こうと出歩いて辿り着いた
そこは賑やかな街の様子はなく、密かに賭け事が売りの裏社会が広がっていた。私はそこでボロボロの少年を見つけた。
「あの、この子は?」
店主は気色悪い笑みを浮かべながら
「人間のガキだ。みすぼらしいだろ?
向こうで1人当てもなく歩いてたから
連れてきてやったんだよ」
連れてきてやった?誘拐の間違いでは?
「俺と賭けをして勝つことができたら半分の
値段でやるよ」
「悪いけど、私は賭け事が嫌いなの。
だから、これでどう?」
私はこの子の首に下げられている値札の数倍のお金の入った袋を店主に投げた。
店主は中を確認するとほくそ笑んで
少年を私によこした。
もし彼女の子孫が来た場合は良き理解者、
友になってくれたらなと私は
のんびりと考えていた。
少年をとりあえず連れて帰り
風呂に入らせて、着替えさせた。
「あなた、名前は?」
少年は俯き黙ったままだった。
「じゃあロク、とかどう?」
「ロ、ク?名前」
「そう、ロク。」
「ありがとう、ございます」
「交換条件。うちで働いてくれる?
そのかわり、衣食住を約束する。
それと学校にも通ってもらう。」
「わかり、ました。」
それからロクは私の使い(見習い)としての仕事をしていた。学校はこの世界に慣れてからということになった。
それからしばらくして
「ナグモ様、俺を妖にすることは
できますでしょうか」
「はい?」
人間を妖にする、それは禁術の書を書き写しているときに知った事。
できないことはない。
「どうして妖になりたいの?」
彼は言った、恩返しがしたいと。
「別に私は恩を売るつもりであなたを雇ったわけじゃないんだけど、
人間のままで働いてくれないかな?」
諭すように言ったが彼は首を縦に
振らなかった。思ったより我が強いらしい。
ロクに数日待ってもらい、私は決断した。
「妖になったら数日は体調不良になると思うから、しばらく休みを入れといた」
すぐに理解したのかロクは真剣な
表情になった。
ーじゃあ、始めるねー
元々、手を汚すつもりだった。
一つも二つも変わらない。
覚悟はできてる。

狐の妖少年、誕生
前代未聞の出来事に町どころか国中大騒ぎになった。ロクはいつからか仮面をつけて過ごすようになった。学校が終わったら仕事という生活に落ち着いた。私は罰としてこの街から
出られなくなった。私の夢は断たれたけど
後悔はしていない。
それから月日は流れ約2年後
私は部屋で水晶に問う。
「我が望む者の今を映し出せ」
この水晶はセツナさんから頂いたものだ。
この宿屋の経営を任せる代わりにこの水晶を
私にくれたのだ。
水晶には1人寂しげな女の子が映った、
家でも学校でも1人のようだった。
この子が・・・
始めるよ、ルイ

この世をつなぐものよ、願いを聞きいれたまえ、我は汝との契約を望むもの、この世の理に反する我を受け入れ、導いてくださり願うことを、かしこみかしこみ申す

迷い祈るものよ、我は願いを賛する者。
汝との契約を結びこの世の理を受け入れる者とし導くことをさし許そう。

彼女と同時に唱えたらこの世界とあの世界をが繋げることができる。私はあらかじめ捕まえておいた迷い蛍を宙へ放つ。
あとは彼女次第だ。
呪文を唱えた時点で私は二つ目の罪を犯していた。次この宿に出入りしたらここからは出られない。生かさず殺さずだろうか。
私は居酒屋に移動した。大通りの目の前だし
大抵の人たちはここの居酒屋を好んでいる。
そして私は右も左もわからないような、
水晶に映った女の子に何食わぬ顔で近づいた

「もし、私の子孫がこの世界に来ることを
望んだら、手助けしてくれる?」

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