妖の街で出会ったのは狐の少年でした

46話 幸せ

私は妖の街から人間の国にきてリクヤさんと
祝言を挙げることができた。
リクヤさんのご両親は鬼籍に入っていたので
2人暮らしだ。
しばらくして子宝に恵まれた。
落ち着いた性格で面倒見のいい長男
自由人だけど人の変化に敏感な長女
穏やかな性格で甘えん坊の次女
双子で体を動かすことが好きな次男と
手先が器用で裁縫が得意な三女
2男3女の7人家族だ
初めは子育てと家事で疲弊する日々が続いた
でもリクヤさんが協力してくれることも増え
身体的にも精神的にも余裕が出てきた。
1人歩きをしたこと。母さんと初めて呼んで
くれたこと。新たな命の誕生。
一つ一つが刺激的で衝撃を受けた。
初子が6つの時、本来ならば伝承しなければいけないのだが・・・
あれはこちらに来るために必要であって
元からこっちにいる子供達には必要ないもの
逆にこっちから向こうに行く呪文もある。
それは私の死期が近くなったときに子孫がいた場合に伝えよう。
それからあっという間に月日は流れ、末子も
成人した。リクヤさんは少し痩せ、力も無くなってきていた。
近所の人からは歳を取らない私を気味悪がり
子供たちと散歩していると初対面の人からは私が長女だと思われることもあった。
リクヤさんが病気を患い必死に看病したが
無意味だったと思わされるほど進行が早く
ほどなくして亡くなった。
すでに独り立ちをしたり家庭をもつようになった子供たちがたまに様子を見にきてくれていた。普通に振る舞っていたつもりだったが
長女に
辛い時はとことん沈んでいいんじゃない?
沈み切らないのに無理して前をむいても疲れるだけだよ。早く全てを受け入れる
必要はない、少しずつ時間をかけて受け入れればいいんじゃないかな。
時間はたっぷりあるんだからさ。
と言われた。
出会い、何気ない日常、授かった命、
子の成長。楽しいだけじゃない、
喧嘩したり、こっちの常識をなかなか
覚えられなかったり、辛いこともあった
でも無駄な出来事なんてひとつもない。
全てが愛おしく大切な思い出だ。
唐突に涙が溢れてきた。
いつかは来ると分かっていた。
頭では理解していたつもりでも、やっぱり
寂しい、辛い。私は泣き続けた。
声が枯れても。それでも長女はずっとそばにいてくれた。
のちに聞くとあの時の私には覇気がなかったらしい。笑顔だけどすごく影があるように
思えたと。
月日は流れ私は祖母になった。
孫はとても可愛く骨抜きになることが多々
あった。孫が成長すれば親も歳をとる。
そして私の子供たちは天寿を全うした。

私もそろそろ天からの迎えが来る頃だろう。玄孫の和葉に伝えることができた
思い残すことはない。約束を守ってくれるだろうか。・・・私が心配してもできることはない。信じよう。親友になってくれてありがとう、ナグモ

父さん、母さん私は幸せだったよ。話したいことが山積みだから会えたら
飽きないで聞いて欲しいな。

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