妖の街で出会ったのは狐の少年でした

5話 星降る夜

しばらく歩くが会話はなかった。あたりは薄暗くなっていた。
「あの、ロク?どこに行くの」
「神社です。ですが神社に用はありません。用があるのは神社のある山道です」
山道?なにをするんだ?少しの疑問を持ち、考えていると山道の入り口についた。
「行きましょう、足元、気をつけて下さい。」
ロクはそう言い、私たちは階段を上り始める。最初の方はスムーズに進んでいたが、だんだん呼吸が荒くなっているのを感じる。ロクは全く平気のようだ。中間あたりなのか、少しひらけた場所に着いた。膝に手を置き、息を整える。
「カズハ様、見てください」
そう言いロクは後ろを指さす。
街の明かりが、すごく綺麗だった。
登ってきたところまで火の玉は消えていたので、それも相待って、鮮やかに見える。この世界にも向こうに劣らないくらい、いやそれ以上に素敵な夜景が目の前に広がっていた。私は感嘆の声を漏らすことしか出来なかった。私は振り返り
「この景色を見せるために私をここに連れてきてくれたの?」
「この景色もそうですが、もう一つ見せたい景色があるんです」
ロクはまた階段を上り始める。私はドキドキしながら階段を上る。
神社に着き、鳥居で一礼して入る。
辺りを見まわしてもなにもないように見える。
首を傾げているとロクに上を見てと言われた。
そこには満天の星があった。たまに流星を見ることができた。瞬きをするのも忘れ、空を眺める。
「ロク」
「はい?」
「ありがとう。こんなに素敵な景色を2つも見せてくれて。あと、簪も。一生大切にする。」
「そのような言葉を頂けるなんて。光栄の至です。そろそろ帰りましょうか」 
歩き出したがよろけてしまった。
「カズハ様?」
「ご、ごめん。ちょっと疲れちゃって」 
ロクは私に背中を向け、しゃがんだ。
「おぶって行きますけど。」
「だ、大丈夫だよ」
「階段があるとは言え、山は下りの方が危ないんです。疲れていると尚更。」
「な、ならお願いします」
おずおずとロクの背中に体を預ける。
ロクはスッと立ち上がり、歩き出す。階段を下りる時の揺れが心地よく、眠りに落ちる。

背中から寝息が聞こえる。カズハ様は危機感というものがないのだろうか。些か心配になる。
昨日の夜、俺はナグモ様に呼び出された。人間の女の子を雇うことにした。
名はカズハというらしい。その子の使いになってくれとのこと、やることは、前と変わらない。ただ一つ増えるだけだ。守れ。絶対にカズハを死なせるようなことはするなと。
宿屋につき、俺はカズハ様の部屋に入る。布団にそっと下ろして、毛布をかけ
部屋を出る。
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