妖の街で出会ったのは狐の少年でした

78話 亀裂

冬休みが明け、数日後カズハ様はジュンや
チヨたち、先生達には普通に接していた。 俺の勘違いかと思い
「カズハさ・・・」
「ごめん、先生に用があるからまた今度」
「あ、」
見事に避けられた。
流石に傷つく、自業自得だけど。

「俺はどうすればいいんでしょうか」
かなり落ち込んだ様子でオレに相談するロク
いろいろ茶化したいが今は我慢して
「目には目を、歯には歯を。
ロクもしばらく距離を置いてみたらどうだ」
「どうして?」
ほんと、こういうのには疎いな、
「避けるってことは少し時間がほしいってことだろ?誰だって瞬時に状況を飲み込めるわけじゃない。カズハが落ち着くまで接するのを必要最低限にして待つのもいいと思うけど。最終的に決めるのはロクだから、オレは助言だけ」
黙っていてロクはしばらくそうすると言って、廊下に向かって歩く。
「独占欲、かぁ」
独り言のつもりだったが聞こえてしまったらしい。ロクは顔だけこちらに向け
「誰にだって欲はあるでしょう?」
口を尖らせて言った。
本当表情豊かになったな。
(似たもの同士か)
実は昨日カズハに相談された
「許して、ねぇ」
「うん」
(かなりの奥手かと思ったんだけどな)
「私、変に意識しちゃって避けちゃう」
カズハは口に手を添えて伏し目がちに答えた
(ずっと一緒にいるから仕方ないけどロクの
癖が移ってるな)
「だったら無理して一緒にいなくてもいいんじゃないか」
「え?」
「カズハの気持ちが落ち着くまで適当に理由つけて1人になったらどうだ?ロクもわかってくれると思うぜ」
「そっか。そうしよう、かな」
そうして今に至る。
(なんか板挟みな気がする)

それからしばらく俺はカズハ様との会話を
最低限にして過ごした。
学校で誰かからの視線を感じるが、あたりを見回してもそれらしい人はいない。
自意識過剰だろう。
数日後、風呂あがりに今日あったことを思い出す。
「あれ、ロク?何してるんだ?」
「ミズキ様」
隣にカズハ様がいないからだろうか
「また喧嘩でもしたのか」
「け、喧嘩なんでしょうか」
俺のしどろもどろな返事に
「はっきりしないな」
眉を下げ笑いながら言った
「あんまり深入りはしないけど言いたいことは言っておかないと後悔するよ」

「後悔・・・」
窓辺に腰掛け窓を少し開ける。
ひんやりとした空気が音もなく部屋に入ってくる。
時折吹く風が心地よく、浴衣の袖を揺らす
「俺はどうしたいんだろう」
次の日学校終わりに帰ろうとしたら呼び止められた。
「あ、あの」
不意に耳が動く
「カズハ様・・・」
「一緒に帰らない?」
「え、はい」
いきなりのことで返事が生半可になる
帰り道、俺は1人分の距離を置いて隣を歩く
「ごめんなさい」
「え、」
「ずっと避けて」
「それは俺が」
カズハ様は遮り続ける
「私、男の子にだ、抱きしめられる、とか初めてで。緊張、しちゃって。恥ずかしくて避けてた。でもやっとわかった。」
カズハ様は歩みを止め、俺を見る。
「ロクは私のこと」
ー好きなんですー
「慰めてくれたんだよね」
口の先まで出かかった言葉を慌てて
飲み込んだ。
「え、いや」
狼狽える俺を余所にカズハ様は続ける。
「不注意とはいえ落ちかけて怖くない人ってそうそういないと思うんだよね。
実際、怖かったし。私を安心させるための行動だったんでしょう?
ありがとう」
俺は一瞬、真っ白になった

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