妖の街で出会ったのは狐の少年でした

98話 絡み合う

翌日、私は身の回りの整理をして宿を後にした。
電車に乗り指定された場所へ行くと、
(なんだろう、このチャペル感)
目の前に広がる結婚式場。
18歳で結婚なんて4年前の私には想像つかないだろうな。
中に入ると、スタッフらしき方から案内されたのはドレスルーム。
てっきり白無垢かと思ったらまさかのウエディングドレス。
正直、気のりはしない。でも宿の看板に泥は塗ることはできない。
私は昨夜出された条件通りミズキさんの
ワンピースに着替える。
待機していると
「新郎様、新婦様の準備が整いました。」
スタッフさんから声をかけられ、新郎と呼ばれた人が入ってくる。
鏡台に映った新郎を見て、驚きで思考が停止する。
「ジュ、ジュン。どうして」
「ごめん」
ジュンはただ一言そう言った。

カズハ様が宿を去ってから俺はもう一度カズハ様の部屋へ。
(言っても後悔する、言わなくても後悔している。)
「どうすればよかったんだ」
一人で呟く。
コンコン。不意に扉をノックする音が聞こえ振り返りるミズキ様がいた。
「ミズキ様」
「カズハが扉を開けっぱなしで行くなんておかしいって思ったら、
なにやってるの。」
ミズキ様はきつい目をして俺を睨む。
「なに、とは」
「自分で分かっているくせにしらばっくれるのか」
俺は壁に迫られ、顔を横に手を音を立てて置かれた。
「なんで言わなかった。好きだ、って」
「俺は使いです。主の幸せを邪魔する行為はしません。」
「ああ、そうかよ」
ミズキ様は手を下ろしたので俺は横を通り抜ける。
「それがロクの答えか。」
「はい」
「なあ、ロク。ちょっとこっち向け」
俺が振り向くと、
バシン
頬に痛みが走る。俺はミズキ様に平手打ちされたらしい。
「綺麗事なんかもう散々だ。」
目に涙を浮かべ俺に近づく。
「使いの在り方なんて聞いていない。ロクの気持ちを聞いたんだよ。
自分を押し殺して得るものなんて何もない。後悔しか残らないんだよ。
カズハもロクもアタシのかわいい後輩だからできる限り後悔はしてほしくない」
ミズキ様はオレの胸ぐらを掴み引き寄せる。
「いいか、素直になれ。綺麗事なんか捨ててしまえ。
後悔するくらいなら奪い取れ」
胸ぐらを掴む手が離れた。俺はミズキ様に一礼して走る。

(従業員に手を出すなんてアタシもまだまだだな)
「なぁ、リオ、ナグモさん」

数日前、私はカズハからの手紙で結婚することを知った。
「結婚、か。」
「ナツキ?いきなり結婚なんてどうしたんだ」
「あ、ミチル。カズハが結婚するっていう連絡が来て」
「へー。行くのか?」
「行こうかな。招待状もらったし」
「そうか、楽しんできなよ」
「うん。」
私は今、受付を済ませて式場の席に座っている。
(カズハが結婚か、ジュンもそのうち結婚して家庭を持ったりするのかな)
そうして中に入ってきた新郎新婦はカズハとジュンだった。
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