恋桜~あやかしの闇に囚われて~
「なんだそれ」

「戦国時代かなんかに、そういう悲劇があったんだって。あくまでネット上の噂だけどな」

 和真は大学で日本文学を専攻していたせいか、その手の調べ物が好きらしい。今回の動画の企画を手伝ってもらうのにちょうどいい人材だった。あのとき、ナンパした女子大生とカラオケ屋に行って正解だったな。

 だいぶ酔いの回ってきた頭で、ミツルはぼうっと和真の話を聞いていた。ビールの缶が空いたので、次はビーフィーターのジンのボトルを開ける。コンビニで端からいろんな種類の酒を買ってきていた。

「このあたりを治めていた城主が戦死して、その娘が一族の宝を託されて落ち延びたらしい」

「ふーん」

「それで、この村に潜伏していたんだけど、村の男と恋仲になって。でも、男はそのお宝が目当てで、結局姫は宝を奪われ殺されて、井戸に投げ捨てられた。……もしかしたら、そこの古井戸かもしれないな」

「おい、やめろよー、気持ち悪いだろ」

 わははと大口を開けて、ミツルは笑った。ホラーな夜にぴったりな趣味の悪い冗談だ。酒に桜に、井戸に怪談。なんておかしな夜なんだ。

「受ける~」

「濡首塚っていう祠もあるらしいよ」
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