恋桜~あやかしの闇に囚われて~
「俺、車に戻ってるからな。なんかあったら呼べよ」

「おー、おやすみぃ……」

 意識が次第に曖昧になっていき、ミツルはそのまま深い眠りに落ちていった。





  †  †  †





 どのくらい時間が経っただろうか。何か聞き慣れない音がしたように感じて、ふと目を覚ましたミツルは、動かそうと思っても自分の体がまったく動かないことに気がついた。

 なんだ、これ……。手も足も動かせない。首も駄目だ。まぶたも開かない。……胸が押さえつけられているようで、息が苦しい。

 金縛りだ。確か、目覚めかけのレム睡眠のときに起こるんだったか……。テレビだったか、ネットの動画か……どこかで聞いたことがある。
 けれど、その『夢』は本当にこんな生々しいものなのか……?



 ――お……ま……して…………ま……



 冷たい指のようなものがミツルの首を締めていた。その力がだんだん強くなる。



 ――や……と…………きた……



 力を振り絞ってなんとかまぶたを開けると……ミツルの胸の上に、濡れ髪の女がまたがっていた。
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