あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる


「大変お待たせいたしました。」


私は、紺色のスーツに着替えて、リビングの神宮寺に挨拶をした。
神宮寺は無言でコーヒーサーバーからコーヒーをカップに注いで私に手渡してくれる。
そして、私の姿を上から下までチェックするように見ている。
紺色のスーツが良く無かったのだろうか
しかし、昨日から家に帰っていないため、仕方がないことだ。


「伊織、今日は仕事じゃないぞ…そんなキッチリしたスーツじゃなくても良いのだが…仕方ないな。」

神宮寺は息を吐くように、呆れたような話し方だ。

「では、上着を脱いで参ります。防寒用にと、カーディガンを持っていますので!」


私は部屋に戻ろうと立ち上がった瞬間に、神宮寺が私の肩を掴んだ。

「もう、そのままで良いから、出かけるぞ。」

神宮寺はスタスタと歩き始めてしまった。
私は追いかけるように後に続いた。

神宮寺は駐車場に着くと、白いスポーツカーの運転席に座った。
そして、窓を開けて私に向かって声を出した。

「立ってないで、早く乗ってくれ…置いていくぞ。」

「…はい。」

私は慌てて助手席に座った。
チラリと神宮寺を見ると、ハンドルを持つ姿も画になっている。
イケメンは何をしてもカッコよく見えて得だ。この男は憎いし嫌いだけれど、カッコいい事は認める。

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