あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる

「伊織さん、今日は取引先を何件かまわるんだ。顔合わせにもなるから今日一日、俺と同行してくれ。」

「はい、畏まりました。」

今日は社長である神宮寺と、社長の第一秘書である 須藤 卓也(すどう たくや)と一緒に同行することとなった。
神宮寺と須藤は大学時代の同級生でもあり、気心が知れた仲だと後から知ることとなる。

車での移動中も、私が運転手の隣に座り、後部座席では神宮寺と須藤は熱心に仕事の打ち合わせをしている。熱心と言えば聞こえが良いが、意見のぶつかり合いでかなり激しい口調が飛びかっている。ただ、聞こえてくる内容からも、お互いを信頼していることも感じられる。良きパートナーなのだろう。

先方の会社に到着すると、入り口で須藤が私の肩をポンと叩いた。

「伊織さん、緊張しなくても大丈夫だよ。今日は付き添いだと思って、気楽にね。」

須藤は私を気遣い笑顔を見せてくれた。
神宮寺と雰囲気は似ているが、須藤は少し柔らかいイメージだ。笑顔が年上なのに可愛いと感じてしまう。
須藤も神宮寺に負けないくらいの、端正な顔立ちをしている。
この二人が一緒にいると、かなり目立つことは間違いない。きっと女性たちが黙っているはずは無いだろう。


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