あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる

悠斗さんの意外な言葉に驚いた。

私の軽はずみな行動を、怒ると思っていたのに、優しい言葉を掛けられた。

心臓がうるさく音を立てている。


「…桜、俺は強引にお前を連れてきてしまったが、鳴海と一緒に居たかったか?」

「な…なんで…そんな事を言うのですか?」


悠斗さんは車を走らせながら、少しの沈黙の後、前を向いたまま話し出した。


「俺は確かに、桜の父親に責任を感じていて、…最初はただつぐないの意味もあり、幸せにしてやりたいと思っていたのは事実だ…でも、今は違うとハッキリ自分で分かったよ。お前を誰にも渡したくない。」

「悠斗さん、…私が可愛そうだから…ですよね。」


すると、悠斗さんはいきなり急ブレーキを踏んで車を止めた。
そして私の方を真っすぐに見て言葉を出した。


「桜、違うと言っているだろ…お前を…愛している。」

「悠斗さん…私は、恐かったんです…同情で結婚してくれた悠斗さんを、愛してしまわないようにしていました。」


何故か私の頬には涙が流れ出していた。自分でも何故泣いているのか分からない。
恐らく、悠斗さんに対して押さえていた感情が溢れだしたのだろう。

悠斗さんは、私の頬に流れる涙を優しく親指で拭ってくれた。


「桜、愛している。改めてプロポーズするよ…俺と結婚して欲しい。本当の夫婦になってくれないか?」

「…私は、悠斗さんを好きになっても良いのですか?…私は恐かったのです。…私も愛しています。」


悠斗さんは、私の肩を掴み引き寄せると、強く抱きしめてくれた。

その腕の中はとても温かい。


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