貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜
　今日一日で二人に抱きしめられるなんて、一体どうなっているのかしら……。切なくて涙が溢れ出す。

「軽蔑なんてしないよ」
「えっ……」
「あんなに真面目で品行方正な真梨子がそんな行動をとるくらいだ。それだけ追い詰められていたんじゃないのか？」

　譲の指が真梨子の涙を拭っていく。

「……どうして俺に連絡しなかった？　番号は知ってるだろ？」
「だって……あなたも結婚して家庭があると思ったし……」
「まぁ結婚はしたよ。二ヶ月で離婚したけど。だから今は独身」
「はぁっ⁈　二ヶ月って……」
「そんなことは今はいい。俺は真梨子に関係を終わらせようって言われた後、すごく悩んだんだ。まぁ君のことだから、体の関係はきっぱり断つつもりだろうってね。だけどそれは友達もやめることになるのか、俺にはわからなかった。だから連絡しなかったんだ」
「だってセフレって……」
「その前に友達だって言ったよな。俺は今でも真梨子を友達だと思っているし、君が苦しんでいるなら助けたい」

　蔑(さげす)まれても仕方がない、そう思っていたのに、譲の優しい言葉が真梨子を安堵させる。

　一緒にいた時間は晃よりも遥かに短い。それなのに、彼の方が私を理解してくれているように感じる。

　きっと時間じゃないのね。根本的な人間性の問題なのかもしれない。だから私は譲に惹かれたんだ。いつも私が不安にならないように明るく接してくれたし、何があっても態度を変えたりしなかった。
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