西園寺先生は紡木さんに触れたい
「やっとついた。人混みが凄くて嫌になっちゃうね。」
駐車場まで歩いて、やっとの事で西園寺の車に乗り込んだ2人はふう、とため息をついた。
「ちょっと…駐車場を出るのにも時間かかりそうだな…時間大丈夫?」
駐車場に出口まで続いている長蛇の列に、西園寺は再びため息をつくと、紡木にそう聞いた。
「大丈夫です。…それより先生、千秋さんたち置いて来てよかったんですか…?」
「ああ、千秋たちは大丈夫だよ。別々で来たし、僕は千秋に客寄せパンダの為に呼び寄せられただけだし。」
そう言ってケタケタと笑う西園寺に、紡木はホッと胸を撫で下ろした。
「それよりも、明日大丈夫?予定とか入ってない?ごめんね、アイツらしつこいでしょ。嫌だったら今のうちに言ってね。」
申し訳なさそうに眉を下げる西園寺に、紡木はぶんぶんと首を振った。
「せっかく誘っていただいたんだし…行ってみたくて。」
夏休みも半ばにさしかかって、ちょうど退屈していた。
少しくらい大人の世界を知るのも、来年から社会人になる私には必要かな。
「そう?それならいいんだけど…嫌なことされたらすぐに言ってね。特に千秋は手癖が悪いから。同じ女性だからって油断したらダメだよ?」
「は、はあ。」
そういえば千秋さんは同性愛者だ、と言っていたような。
紡木は真面目な顔をしてそう言う西園寺に、少し戸惑いながら返事をした。
そんな紡木の様子に、西園寺は心底不安になった。