西園寺先生は紡木さんに触れたい
こうして紡木さんと予期せぬ繋がりができたことは嬉しくもあるけど…
こんなに近づいたら、もっと紡木さんの心に触れたくなって、切なくなる。
いくら手を伸ばしても指先を掠めてすらいないような心を手に入れたくて、苦しくなる。
こんな気持ち、紡木さんにはわかってもらえないだろうな。
西園寺はそう心の中で自嘲気味に笑った。
「じゃあ、また明日の11時頃に迎えに来るね。何かあったら連絡ちょうだい。」
紡木の家の前に着くと、西園寺はそう言って紡木を見送った。
紡木も「はい。ありがとうございます。」と告げると、シートベルトを外して、車のドアを開けた。
「おやすみなさい。」
いつもより穏やかな表情でそう言う紡木に、西園寺も優しく微笑んで「おやすみ。」と返した。