西園寺先生は紡木さんに触れたい
んん…。
紡木がパチリと目を開けると、灰色の天井が広がっていた。それが西園寺の車内だと気づくのにそう時間は掛からなかった。
「紡木さん…!?気がついた?」
声の方を向くと、焦りを滲ませた西園寺の表情が彼女の視界に入った。
「す、すみません…。私…。」
「ううん、謝ることじゃないよ。大丈夫…じゃないよね。」
そう眉を下げて運転席から後部座席に寝ている紡木の顔を覗く西園寺に、紡木は否定も肯定もせず、目を伏せて悲しげに笑った。
「あ、そういえば千秋さんたちは…。」
「ああ、ちょっと別で帰ってもらった。…とりあえず、紡木さんも家まで送るね。」
そう言って、目を向いて出発する準備をし始めようとする西園寺に、「あの…。」と紡木は口を開いた。
「先生に、言わなきゃいけない事があります。」
私を好きになってくれた先生に。
そして、ここまで巻き込んでしまった先生に。
紡木の言葉に、西園寺は驚いて彼女の方を振り向いた。
紡木は、潤んだ目で西園寺を真っ直ぐに見つめて続けた。