西園寺先生は紡木さんに触れたい

「うわ〜っ!懐かし〜!!」


駐車場に停めた西園寺の車から少し歩くと、一面に砂浜と海が広がった。

お盆休みということもあり、それなりに混み合っているビーチ内を4人で歩いた。


「あ、この辺りだよな、俺たちが圭ちゃんを落としたのって。」

「だね、この辺だった気がする。」

そうしみじみと語る千秋たちに、紡木は吹き出しそうになった。

「それにしても人が多いわね〜!」


そう言ってきょろきょろとあたりを見渡す千秋に、紡木の後ろにいた樹が「だな。」と賛同した。

人の波を縫うようにして進んでいくと、漸く西園寺が昔バイトをしていたという店が見えてきた。


「わっ…!」

と、その時。反対側からやってきた人の肩が、紡木に当たった。

砂浜という足場の悪いところだったのもあって、紡木は盛大によろけた。

「うおっ…と。あぶね〜、尻餅つくとこだったな。」


転びそうになったところを、後ろにいた樹が紡木の腕を掴んで支えた。


しかし、紡木はもはやそれどころではなかった。


私の腕を掴んでいるのは、樹さん。
紛れもなく男。

そう思うだけで脚に力が入らなくなって、クラッと倒れ込んだ。


ああ、まずい。

それからポツポツと腕の一部から全体へと広がる感覚。

先生にバレたくなかったのに…。


「紡木さん!?どうしたの!?」


自分の名前を呼ぶ声が聞こえてきたと同時に、紡木は気を失った。

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