西園寺先生は紡木さんに触れたい

「そういや、ツムツムって就職組なんだろ?今すげえ忙しいんじゃねえの?」


箒を片手にゴミ箱に寄りかかる蓮に、紡木は「うん、まあね。」と作り笑いを浮かべた。


「霧島くんはさ、昔から家の仕事継ぎたいって思ってたの?」


話を逸らすために、ずっと気になっていたことを問いかけると、蓮は「…どうだろうな。」と意味ありげに呟いた。


「ただ、一つの言葉に縛られてきただけなんだ。ずっと。」

そう言って蓮は語り出した。





「蓮、貴方は道を踏み外しちゃダメよ。」

蓮の母は、まだ幼い蓮にそう悲しそうに呟いた。

「貴方は、絶対に…。」


そう言って亡き兄の、傷ついたバイクのヘルメットを抱きかかえた母は大粒の涙をこぼした。

黒い服に身を包んだ幼い蓮は、それをただ不思議そうに見つめていた。



蓮が小学4年の時に、6歳離れた兄の陸が亡くなった。
バイクを無免許で乗り回した挙句、電柱にぶつかったらしい。


それ以前からなにかと厳しい父親に反抗するように、陸は夜遊びや未成年喫煙などの所謂不良行為を繰り返していた。無免許運転もその延長線上だった。


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