西園寺先生は紡木さんに触れたい

『なあ、兄貴はなんで不良になったの?』

『…もう操り人形は嫌だって、意思を示すためだな!』

『操り人形…?』


ああ、兄さんが言っていた操り人形って、このことか。


俺だって、なってたまるもんか。



その後父は男性教師に取り押さえられ、蓮たちも教室を後にした。


家に帰るなり父は自室へとこもり、リビングでは蓮と母、2人きりになった。


その瞬間母は声を上げて泣き出した。

ギョッとした目で見る蓮に目もくれないまま、わんわんと泣き叫ぶ母に、蓮はスッと感情が消え失せた。


ああ、父さんも母さんも
言うことを聞いてくれて、勉強もできる操り人形が欲しかったんだ。
俺のことなんてどうでもよかったんだ…。

そう思った瞬間、涙すら出ず、ハハ、と乾いた笑いが漏れた。




「…っていうわけなんだ。」

「そう、だったんだ。」

頭空っぽそうに見えて心の奥に色々隠してたんだなあ、と感心した。


「まあ、そういうことよ。それから葵に出会ったから母さんは葵のせいで俺が荒れたって勘違いしてるんだよなあ。」


そう言って空を仰ぎながら蓮がぼやいていると、中から先程の店長らしき人が顔を出して「レジやって。」と蓮に向かって言ってきた。


蓮は片手を上げて「うっす。」と返すと、「じゃあ、またな!」と言って店の中へと入っていった。


紡木も軽く挨拶を返すと、駅のロータリー近くを歩き出した。

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