西園寺先生は紡木さんに触れたい

「つむちゃん、ガッキーが職員室に来てって呼んでたよ。」


不意に上から聞こえてきた声に顔を上げると、「え、なんでだろ?」と呟いた。

その声の主もよくわからないといった風に首を傾げた。

紡木はお礼を言って立ち上がると、職員室へと向かった。




昼休みの職員室はそこそこ空席が目立っている。

紡木はきょろきょろと周りを見渡しながら、ガッキー─担任の平垣内先生の姿を見つけると、足早に近づいた。


「平垣内先生。」


「お、おお。紡木、待ってたぞ。」


「話って、何ですか?」


「放課後、化学準備室にくるようにって西園寺先生からの伝言だ。化学のテストがどうの、とか言ってたけど。」


うげっ。


西園寺、その名前が出た瞬間に紡木の顔が一気に凍りついた。


くそお。化学のテストがどうのとか嘘をついてガッキーを使うなんて。

卑怯だ!悪魔だ!職権濫用だ!


「紡木さあ…化学が苦手なのはわかるけど就職組だろ?あんまり成績悪いと就職に不利だぞ?後でちゃんと行ったか西園寺先生に確認するからな?」


確かに化学のテストは赤点ギリギリになる程苦手だけど!就職に不利なのもわかってるけど!!


ふう、とため息をつくガッキーに、ため息つきたいのはこっちだよ!と叫びたくなる紡木であった。

< 23 / 367 >

この作品をシェア

pagetop