西園寺先生は紡木さんに触れたい
「つむちゃん、ガッキーが職員室に来てって呼んでたよ。」
不意に上から聞こえてきた声に顔を上げると、「え、なんでだろ?」と呟いた。
その声の主もよくわからないといった風に首を傾げた。
紡木はお礼を言って立ち上がると、職員室へと向かった。
昼休みの職員室はそこそこ空席が目立っている。
紡木はきょろきょろと周りを見渡しながら、ガッキー─担任の平垣内先生の姿を見つけると、足早に近づいた。
「平垣内先生。」
「お、おお。紡木、待ってたぞ。」
「話って、何ですか?」
「放課後、化学準備室にくるようにって西園寺先生からの伝言だ。化学のテストがどうの、とか言ってたけど。」
うげっ。
西園寺、その名前が出た瞬間に紡木の顔が一気に凍りついた。
くそお。化学のテストがどうのとか嘘をついてガッキーを使うなんて。
卑怯だ!悪魔だ!職権濫用だ!
「紡木さあ…化学が苦手なのはわかるけど就職組だろ?あんまり成績悪いと就職に不利だぞ?後でちゃんと行ったか西園寺先生に確認するからな?」
確かに化学のテストは赤点ギリギリになる程苦手だけど!就職に不利なのもわかってるけど!!
ふう、とため息をつくガッキーに、ため息つきたいのはこっちだよ!と叫びたくなる紡木であった。