西園寺先生は紡木さんに触れたい

「せんせっ！失礼します！！」


“廊下は走るな”
そんな基本的な事すら守っていられないほど、西園寺圭統(さいおんじ けいと)は逼迫していた。


「あらあら、西園寺先生。大変ですねえ…ベッドは空いてるからご自由に。」


「ありがとうございます！」


保健の先生も慣れていることなのだろうか、特に驚くこともなくベッドに促すと西園寺は感謝の意を述べて早々にベッドにダイブして布団にくるまった。


それから数十秒経ってから、ガラガラと保健室のドアが開く音がした。


「西園寺先生〜！あれ、ここに来てない？」


その声が聞きえてくるなり、西園寺はギュッと身を固くして、さらに深く布団を被った。


「来てないですよ。あのねえ、ここは怪我人と病人以外はダメよ〜先生と追いかけっこしてるなら他所でやって頂戴。」


そう言って保健室の先生がピシャリと言うと、女子生徒たちも渋々と保健室を出て行った。



「…すみません。」


「いいえ〜、西園寺先生は悪くないですから。」


「助かります。」


西園寺はそう言って体の緊張を少し解した。