西園寺先生は紡木さんに触れたい
「これ。紡木さんに。」
化学準備室につくや否や、西園寺は机の引き出しの中から紙袋をおもむろに出すと紡木に手渡した。
紡木が有名な神社の名が書かれたその紙袋を受け取ると、「開けてみて。」と西園寺は促した。
促されるがままに紙袋を逆さまにすると、緑と青の糸で織られたお守りが出て来た。
表面には白い糸で『就職成就』と刺繍されているそれを手で摘むとまじまじと見つめた。
「来週でしょ、試験。僕からのプレゼント。」
「あ、ありがとうございます。」
嬉しさと、このまま就職していいのかと迷っている心が入り混じってぎこちなく笑うと、ポケットの中にそれをしまった。
「応援してるよ。」
そう言って柔らかく笑う西園寺に、紡木は「ありがとうございます。」と返した。
「…もしかして緊張してる?」
ぎこちない笑みが残る彼女の顔を覗き込みながらそう言う西園寺に、紡木は「い、いえ!」と顔を思い切り逸らした。
そんな様子の紡木に西園寺はクスリと笑うと「大丈夫。」とふわりと包み込むような声で言った。