西園寺先生は紡木さんに触れたい

「─早速本題なんだけど…。」


椅子に座るなり、真剣な目をして西園寺は語り出した。


「僕、恋愛経験がないんだ。」


「え!?」


紡木が驚嘆の声を上げると、西園寺は思わず笑った。


クールに見えて意外と表情変わるよなあ、この子。


「あ、いや、少し語弊があったかも。僕、ちゃんと人を好きになったことがないんだ。」


「え、そ、そうなんですね。」


「うん…告白されたら付き合うし、その…誘われたら体も重ねるけどさ、自分から恋愛感情を抱いたことがなくて。

好きっていう気持ちはわかるんだ。でもそれって家族が好き、友達が好き、生徒たちが好き、と同列で。

恋愛感情ってもっと、特別なものなんでしょう?

僕に教えて欲しいな。」


身体を重ねる、は余計だったななんて後悔しつつも、西園寺は静かに笑った。


紡木は少し考えると、ゆっくり靴を開いた。


「…そうですね、難しいですよね。

家族も友達も、幸せになって欲しい、幸せにしてあげたい、そう思うものですよね。

でも、そこに、自分だけを見て欲しい、自分だけが見ていたい、自分だけが触れていたい、っていう気持ちがプラスしたのが恋愛感情だと思うんです。」


「う、うわあ…。」


西園寺は大きな目を揺らしながら、感嘆の声を上げた。


さすが紡木さん。
今だけは僕よりも大人びて見える…。

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