西園寺先生は紡木さんに触れたい
「あ、そういえばこんな遅くなって親御さん大丈夫?」
そんなに大して遅い時間でもないけどな、と紡木は思ったがそこはスルーして「大丈夫です。」と返した。
「女の子がこんな遅い時間に帰ってくるなんて!ってお父さんに怒られない?」
「…私の家、父がいないので。」
別に、そこはスルーすればよかったのに。紡木はなぜか訂正して、瞬時に後悔した。
別に父親がいないことなんて、どうってことない。
物心がついた時からいないし。
それよりも車内の空気が重くしてしまって申し訳なく感じた。
「そっか。そうだ、紡木さんが好きなお菓子って何?」
内心、先生が変に同情とか、謝罪とかせずに軽く流してくれたことに紡木はほっとした。
「ん〜、チョコとか…?あ、タルトも好き!今の季節だと夏蜜柑のタルトとか、美味しいんですよねえ。」
味を想像して思わず頬が緩んだ紡木に、そしてチョコというワードに西園寺は笑みをこぼした。