西園寺先生は紡木さんに触れたい
あ、誰かいる。…しかも女子生徒か。
多目的ホールで後少しのところで、西園寺は思わず足を止めた。
目標の自販機の横に設置されてるベンチには、明らかに女子生徒が座っていた。
あー…あれは、
確か、紡木さんだ。
普段のクールなイメージとは違って、顔を綻ばせながらピンクのパッケージのパックジュースを飲む彼女に、西園寺は思わず顔を綻ばせた。
可愛いな…。
いやいや、何を思ってるんだ、僕は!
それと同時に彼女も西園寺に気付いたらしく、2人の視線が重なった。
目が合う前に、自販機は諦めて引き返そうとした矢先に彼女と目があって西園寺は思わず苦笑いを浮かべた。
こうなったら女子生徒は猛ダッシュで僕に近づいてくる筈だ。いつもだったら。
…しかし、彼女は一向に近づいてくる事はなかった。
そうだ、紡木さんは僕に近づいてこないタイプの人だった。
そう思うと一気に安心したのか、にこにこ笑顔を浮かべて自販機に向かった。
彼女は西園寺が近づいてくるなりみるみるうちに顔が曇っていく事に、西園寺自身は全く気付いていなかった。