西園寺先生は紡木さんに触れたい
自販機の目の前に着くと、財布から出したお金を入れて、御目当ての商品のボタンを押した。
ガコン、と大きな音を立てて落ちてきたそれを、西園寺は大きな背を屈めて手に取ると、よっこいしょ、と紡木が座っていたベンチに腰掛けた。
紡木はビクッと肩を震わせて、西園寺が座った方とは逆側の隅まで精一杯身体を寄せた。
普段関わる女子生徒との対応の正反対さに、西園寺は一瞬驚いたが、すぐに紡木さんはこういう人だった、と笑った。
「いちごミルク好きなの?」
「…。」
「そうなんだ、好きなんだ。」
「…。」
話しかけても、堂々とガン無視する紡木に、西園寺のハハ、と乾いた笑いが多目的ホールに響いた。
なんか掴めないんだよなあ。この子。
これなら囲まれてる方がマシかも。
西園寺はそう思って、飲み終わったゼリー飲料のパックをくしゃ、と掌で潰して立ちあがると。