西園寺先生は紡木さんに触れたい

「そういえばさ、紡木さんって進学希望?それとも就職?」


車を走らせてからしばらくした後、西園寺は不意に紡木に質問した。紡木は真っ直ぐを向いたまま淡々と答えた。


「就職です。」


「ふうん、何か就きたい職業とかあるの?」


「そういうわけではないんですけど、母を楽にしてあげたくて。」


西園寺はふうん、と相槌を打つと、暫く考え込んでから、何かを思いついたかのようにパアっと顔を明るくした。


「そうだ、僕に永久就職すればいいじゃん!」


「はあ!?」


何を言い出すかと思えば、とんでもない提案をしだした西園寺に紡木は呆れてため息をついた。


冗談なのか本気なのかわからない。
…いやそれはどうでもよくって。


この人といると疲れる…。


「どう?いい提案じゃない?」


そんな紡木の思いに気付いてない西園寺が能天気にそう返すと、


「遠慮しときます!」


紡木はハッキリと否定した。


「えー、つれないなあ。」


「何とでも言ってください。…あ、ここで大丈夫です。」


紡木の声に、西園寺は車をゆっくりと停めた。

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