西園寺先生は紡木さんに触れたい
「紡木さん、どれ食べたい?」
箱の中には形の違うチョコレートが5種類入っていた。
中に同封されていた紙を見ながら西園寺は「これは中にキャラメルクリームが入ってて、こっちは…」と説明した。
「これがいいです。」
「うん、食べな。…あ、あーんしてあげようか?」
西園寺がふざけて言うと、紡木は思いっきり顔を顰めた。
「冗談だって、ほら、食べて。」
そう言って笑う西園寺を訝しげな表情で見つめながら、紡木は一粒取って口に放り込んだ。
ん〜。流石は高級店のチョコレート。
品の良い甘さがじわじわと口の中に広がった。
思わず頬が緩む紡木に、西園寺も笑みが溢れた。
「もっと食べてね。」
そう言う西園寺に乗せられて、紡木は次々と口に放り込んだ。
「どう?美味しかった?」
最後の一粒が口の中で溶けて無くなる頃、西園寺は紡木にそう聞いた。
紡木が正直に頷くと、西園寺は嬉しそうに笑った。
「じゃあ、行こっか。」
いつの間にか帰り支度を終えた西園寺と一緒に準備室を出ると、昨日と同じように西園寺の車に乗り込んだ。