西園寺先生は紡木さんに触れたい
「はーい、席に着こうねー。」
痛みの代わりに紡木に降り注いできたのは、西園寺の柔らかい声だった。
驚いて目を開けて見上げると、そこには蓮の腕をにこにこ笑顔で握っている西園寺がいた。
しかし見れば見るほどその目の奥は笑っていないどころか怒りさえ帯びている。
蓮の手首を握っている方の腕からは、いつものひょろりとしたそれからは想像もできないほど太い血管が浮き立っていた。
そのギャップに驚いたのは紡木だけじゃなかったらしい、クラス中の女子がきゃあきゃあと黄色い声を上げて盛り上がっていた。
「先生カッコいい!」
「アタシもあんなふうに守られたい…。」
「てか霧島くん、何なの?」
「女の子に手をあげるとか、マジでないわ。」
コソコソと聞こえてきた声に、蓮は「くそ!」と声を出して西園寺の手を振り切ると、教室を飛び出していった。