西園寺先生は紡木さんに触れたい

「あ、ありがとうございます。」


紡木はそう言って西園寺の顔を見上げると、西園寺は無言で笑顔を返して、教卓へと戻っていった。


あれ、でも何で先生がここに?


そう思った瞬間、今日の一時限目が化学であることを思い出した。



「…で、ここで電離度が解るという事になります。」


化学の授業は、それまでと変わらずに執り行われた。

流石に先生も馬鹿じゃないし、授業中にはちょっかい出さないよね。


…でも、ちょっとクマが薄くなっててよかった。


好きじゃないしウザいけど、流石にあんなクマでヘロヘロしてたら不安になる。


…なんかこういうこと前にもあった気がするけど、気のせい??


なんて思いながら、ぼーっと西園寺の顔を眺めていると。


「僕の顔ばっかり見てないで、板書とってね。」


西園寺が苦笑を浮かべながらそういうものだから、ビクッと肩を震わせた。


え、私に言ってた??


紡木が焦って周りを見渡すと、「やだー。」「だってかっこいいんだもん。」と言う声が他所から聞こえて、自分に言っているわけではなかったんだ、と安堵のため息をついた。

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