西園寺先生は紡木さんに触れたい
「失礼します。」
放課後、化学準備室のドアを開けながら放った紡木の声は、誰もいない室内に響いた。
本当にいないんだ。
いつも西園寺が座ってるデスクには、彼の白衣が掛かってるだけだった。
紡木はいつもの椅子に腰掛けて、ふう、と一息をつくとすぐに作業を始めた。
一人きりの室内は思った以上に雑用が捗る。
これなら一時間も経たないうちに終わってしまいそうだ。
そう思いながら紡木は黙々と作業を続けていた。
「あ、ありがとうね、お疲れ様〜!」
紡木が準備室に来てから40分ほど経った頃、西園寺が準備室に戻ってきた。
いつもと変わらないにこにこ笑顔に、手には手提げが付いた箱を持っていた。
西園寺はそれを紡木の前に置くと、いつもの椅子によっこいしょ、と腰掛けた。
「もう終わりそう?」
「今、ちょうど終わりました…。」
「そっか、本当にありがとう。助かった〜。」
西園寺はそう嬉しそうにいうと、そのままパソコンに向かった。