西園寺先生は紡木さんに触れたい
「あれ、先生の荷物は?」
タルトを食べ終わって少しして、送ってもらおうと席を立った時。
いつもは西園寺も自分の荷物を纏めて、白衣も脱いでいたが今日は白衣も着たまま、荷物も持たずに一緒に準備室から出てきた。
「え?僕はまた戻ってやらないといけないことがあるから…。」
「え!?」
学校から紡木の家まで片道約20分、学校まで戻ってきたら40分も時間を無駄にしてしまうことになる。
「私はいいですから、仕事をしてください!」
「そういうわけにもいかないでしょ。さあ、行った行った。」
西園寺が手でひらひらと進むように促したが、紡木はそれに応じずに準備室のドアの前で食ってかかった。
「行かないです…!申し訳ないです、先生、忙しいのに!」
「大丈夫。これも教師の仕事だから。
それに紡木さんが夜道で襲われるかもって考えたら、仕事が進まないことより断然そっちの方が嫌だ。」
「別に、襲われないですよ。そんな物騒なことなかなかないですよ。」
「紡木さんは可愛いんだしもうちょっと危機感持った方がいいと思うよ。」
可愛い、と言われて、紡木は顔を赤くして西園寺を睨むことしかできなかった。
そういうところが可愛いっていうんだよ…。
赤く潤んだ目で見つめる紡木に、西園寺は少し目線を外した。