西園寺先生は紡木さんに触れたい
「…そんなわけないでしょ。」
「え、だって、私が大好きなものばっかり買ってくるし……タルトはありがたく頂きますけど、私、絶対に先生と付き合わないし好きにならないですからねっ!」
そう言い捨てると、「いただきます!」と言って紡木はタルトに手をつけた。
「はあ…紡木さんにちゃんと聞いて欲しいんだけど。」
いつもとワントーン低い声でそう話し始める西園寺に、紡木は少し驚いて口にタルトを頬張ったまま西園寺の方を向いた。
「僕は紡木さんのことが好きだけど、食べ物で釣ろうとかも思ってないよ。
ただ、好きな人が好きなもの食べて幸せな顔を見ていたいだけ。
それだけだから。」
真面目な顔をして好き、と言う西園寺に、紡木は顔をそらして小さな声で「…はあ。」とだけ返した。
この先生はどうしてこうも
恥ずかしげのある言葉を堂々と言えるんだろう…
顔を赤らめながら紡木は黙々とタルトを食べた。
「さあ、それを食べたら送っていくね。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
初日に比べて素直に送られる紡木に西園寺は、もしかして餌付けも意外と効果あり?とこっそり笑った。