西園寺先生は紡木さんに触れたい

「えー!?だれだれ??どこで出会ったの!?どういうひと!?」


葵は驚きのあまりガタンと椅子から立つと、マシンガンのように責め立てた。


「う〜ん。この学校で出会って、可愛くて、心の優しい人、かな。」


そう言ってチラリと紡木の方を見ると、紡木は微かに赤くなった顔をぷいっと逸らした。


「…わ、わたし、用事あるんだった〜!カエラナキャ〜!」


恥ずかしくて早くこの場から去りたい紡木は棒読みでそう言うと、颯爽と化学室を後にした。


パタパタと出て行くその背中を見て西園寺は、ちょっとからかいすぎたかな…とこっそりと笑った。


「え、待って…それって……私??」


「「は?」」


葵の突拍子のない言葉に蓮と西園寺の声が珍しく重なった。


「え?ちょ、ちょっと、遠藤さん…??」


あわあわしている西園寺の元に、葵はうっとりした顔のままゆっくりと近づいていった。


「なんだ、ケイト先生…それなら素直に言ってくれたらよかったのに…。」


そう言って西園寺の手を取り握る葵に、西園寺は「え?ちょっと、遠藤さん!」と振りほどこうとした。


「西園寺、テメェ!!!」


そんな2人の姿を見て激昂した蓮が、反対側から襲いかかってきた。


「ちょ、ちょっと、霧島くん!誤解だって!!遠藤さん、離して…力強っ!!」


「やだ、ケイト先生ったら…!」


「うおおお!西園寺!!!」


身体の右側にはベッタリと抱きつく葵、左側には殴りかかってくる蓮を携えて、西園寺の目にはじわりと涙が浮かんできた。


だから補講なんてやりたくなかったんだ…。


そう心の中で呟く西園寺であった。
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